cahier

À tes souhaites.

このままならない世界に

 

 

年末に二冊、本を購入した。

 

一冊はすぐに読み切り、もう一冊は「今じゃないな」と大事に取っておいた。

私はいつもあらすじを把握してから買うようにしているのだけど、その本は違った。

タイトルを見た瞬間、読まなければいけないような、義務感を覚えるものだったからだ。

 

 

眠れない夜があった。

何を考えても、何を言っても偽善でしかないように思えて。あまりに平和ボケしている私は、その身近にあってもおかしくない問題を、他人事としてしか見ていなかったのだと思う。

 

 

何かに縋るように手に取ったのが、先の本、『52ヘルツのクジラたち』だった。

 

 

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愛を求め愛に裏切られ、絶望の中を生きた貴湖と絶望の中を今まさに生きる少年が出会い、そして彼らを取り巻く様子を描いた愛の物語。

 

虐待、暴力、誰かのエゴイズムの犠牲になる数々の描写に目を背けたくなる。

それでも2021年一冊目がこの本でよかったと心から思う。

 

 

“ひとというのは最初こそ貰う側やけど、いずれは与える側にならないかん。”という村中のお婆さんの言葉がやけに刺さる。

 

心の浮き沈みはあったとしても、何事もなく生きてこられた私の人生。だけどそれは決して私だけの力ではなく、守って、叱って、赦してくれた存在が周囲にいてくれたおかげであって、それは親だけではなく、友人、学校、地域いろんなところに“眼”があったからこそなのだと思う。

 

そうして私はたくさんのものを貰ってきた。

だから次は誰かに与える番。

 

経験も知識も乏しいので私の言葉では説得力は皆無だけど、52ヘルツの周波数で泣くクジラを一人にさせない社会へ、貴湖のように、貴湖と少年を支えた周囲の存在のように、誰かのSOSを取り零さない社会へしていかなければならない。

寄付や情報の共有等、できることはたくさんある。世界中にネットで繋がれる便利な世の中だからこそ、その恩恵を利用して私ができる最善な方法を見つけていく。それが今の私にできることだと思う。

 

 

 

タイトルに惹かれて手に取った本だったけれど、内容・タイミングともに今の私が読まなければいけないものだったなと思うし、それもまた気づかぬうちに52ヘルツの周波数が届いていたのかもしれない。

 

 

 

最後に、「皆さんは愛されるべき存在です」と言うあなた。闇に飲み込まれて、深い悲しみを一人で背負わないでね。あなたが投げかけてくれた問題をみんなで一緒に考えよう。

 

あなたからのパスを無駄にしないように。